「最後の晩餐」と世界一かわいそうな絵。

前半のミラノの目的は、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」です。銀座かねまつのディスプレイ(2001年)でもモチーフにしているし、自分の作品でも引用したものがあるのですが、今回やっと本物を見ることができました。
「最後の晩餐」はサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の元食堂だった長方形の部屋のひとつの壁全体に描かれた、横巾9メートルにおよぶ壁画です。この部屋には順番に25名ずつくらい、15分間だけ入れます。
美術でも作品によっては「本物はやはりいい」とは限らず、例えばマネの作品を以前パリで見たときなど、正直がっかりしたものですが、「最後の晩餐」はその素晴らしさに唖然とするほどでした。特に全体と細部との調和。画集などではかなりじっくり見て知っているつもりだったのですが、露骨に印象が違うので戸惑いました。
人物の配置や「ダ・ヴィンチ・コード」などで語られる謎めいた部分よりも、テーブル上の食器やパン、あるいは窓の外の風景といったいわば脇役が、目が離せないくらい美しく、少し大げさに言えば、人物たちを取り巻くそれらの細部に神が宿っている、というような印象でした。
ところで、「最後の晩餐」が描かれている壁の真反対には、もうひとつの壁画が描かれています。ドナト・モントルファーノという画家の「キリストの磔刑」です。しかしながら、拝観時間がわずか15分ということもあって、部屋にはこの二つしか作品がないというのに、モントルファーノの絵を見る人など誰一人いません。出口近くの壁全面に描かれているので、皆その前を通るのですが、目に焼き付けた「最後の晩餐」のイメージを汚されたくないとでもいうように、立ち止まることはおろか、ほとんど目もくれずにこの部屋を出て行くのです。
「最後の晩餐」が世界一有名な絵だとすれば、こちらは世界一気の毒な絵としか言いようがありません。私は密かにこの壁画に「モントルファーノの悲劇」という別題をつけました(笑)。

One Comment

  1. 伎芸天 より:

    「モントルファーノの悲劇」…
    僕は「最後の晩餐」を観ましたが、
    もう一つのフレスコ画の記憶は全くありません。

    次回は、こちらもじっくり…
    全部で15分…3分ぐらいは、と。

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